父親がいわゆる一つのハゲでした。
波平さんを想像してもらえばいいでしょう。
でも、父だけならまだしも、父の兄弟3人もまたいわゆる一つのハゲでした。
正月に、そんなおじさんたちがわが家に集まります。
そして4人で、去年一年間で誰が一番薄くなったかを嬉々として競います。

子供の時分から、そんな悪夢のような光景を毎年見てきました。
この人たちは髪の毛はおろか、頭の中まで薄いのではないかと恐れ戦いたものです。
薄毛は遺伝すると言われました。
ですから、育毛、増毛、植毛を意識したのは前途洋洋たるべき小学生の頃から、と言っていいのかもしれません。

そして月日は流れて、ボクもいいオッサンになりました。
幸いなことに、髪の毛はまだ健在です!
決して、フサフサとは申しません。
環境破壊の影響で砂漠化が進む地球のようにおでこも広くなりました。
一本一本の髪の毛も抜け落ちると、肉眼では発見しにくいほど細くなりました。

5年ほど前のある冬の日のことでした。
仕事帰りの電車の座席でウトウトしていますと、揺れに合わせて頭の後部が後ろの窓ガラスに当たりました。
その瞬間のひんやりとした感覚が、一縷の希望にすがっていたボクの目を覚まさせました。

外にいても、そうです。
冬になると、まず頭がそれを教えてくれます。
季節の変化を頭で感じることができるハゲという詩人でいるべきか、それとも育毛、増毛、植毛という現実の工事に乗り出すべきか。
僕は今、ハムレットのような人生最大の岐路に立たされています。





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